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次にシワ一つない高級そうなスーツをまとった好青年が呼ばれる。ハンナの話を聞いてか青年は机の上で鳩のように胸を反らし自分の判決を余裕の笑顔で待っていた。シスターは彼にも慈愛に満ちた穏やかな笑顔を向ける。
「あなたは地獄行きです。」
その声のトーンにそぐわない判決に青年はあんぐりと口を開け、少ししてから顔を真っ赤にさせ子供のように駄々を捏ね、シスターに向かって侮辱の言葉を並べた。少しも表情を変えないシスターは彼の生涯を振り返る。
手柄の横取りに横領、詐欺まがいとこちらもツラツラ並べられた。最終的に取り乱した好青年は暴力に訴えかけようとしたが地獄からの使者に床から引きずり込まれ、跡形もなくなった。テリーは怖くなってきた。
そしてまだ教室に人がいるのに次はテリーが呼ばれた。シスターは少し不愉快そうに眉をひそめる。
「テレンス、あなたは地獄行きです。」
「…んー、ふ、」
「万引き、詐欺、交通事故、余罪諸々…」
返事にとても困った。そうですね!も嘘でしょ!?も言えない絶妙な心持ち。もし可能なら私の生涯を振り返る前に地獄に送って欲しいとシスターに頼むが彼女は認めなかった。
「公平に判断するために必要なことです。さてテレンス、あなたは父ジミーと母アンナが授かった三姉妹の末っ子、間違いないですね。」
シスターの言い方に機嫌を損ねた若いテリーはぶっきらぼうに頷く。シスターは続けた。テリーの生涯はこんな感じだった、それを語るにはまず父ジミーの話が欠かせないだろう。
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