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ーーー無事に生まれたのは三人だけでした。
目の前の現実を見ても、医師の言葉を受け取っても目を赤く腫らしたジミーは理解が出来なかった。
一日も早く会いたいと、抱きしめたいと四人分のベビー服を持参してアンナを応援に来ていた気が早いジミーは診察室でベビー服が引きちぎれるほど握りしめていた。
「…最初のお子さんは未成熟で産道が狭く、私どもも最大限手を尽くしたのですが……」
「タリーは、どこだ…。」
鼻を赤くしたジミーはさ迷うように手を伸ばし、次の瞬間激しい憤怒を医師にぶつけて強く揺さぶった。
「俺の!俺の子供は!!タリーはどこだ!」
「げほっ…おち、落ち着いてください…!」
命の危険を感じた医師は看護師に指示した。
ーーこの表現が適切かーー長く悩んだがーー
それは「肉の塊」に近しいものだった。
しかしジミーは我が子を落とさないよう大切に抱きしめ、涙で濡れた鼻先を押しつけ、歯を食い縛りながら額であろう場所にキスをした。とても冷たい…それでも自分の娘だった。
「ああタリー…可愛いタリー、パパだよ…父さんって呼んでくれ…お願い、だから…死なないでくれ…ううっ、ぐすっ…死なないで…くれ…」
これ以上は良くないと医師が引き離すまでジミーはタリーを撫で続け「愛してる」と繰り返した。
アンナには翌朝に告げられ、三人の娘との対面に喜ぶと同時に…張り裂けそうに泣き叫んだ。冷静沈着な彼女が感情的に取り乱したのは後にも先にもこの一回だけだった。
時間がない、そう気付いた夫婦は急いでタリーの手形を取り、色違いのベビー服を着せて写真を取り、ジミーが走って買った来たケーキに1本だけろうそくを灯し消して…泣いて別れを告げて、医師に任せた。次にタリーが戻って来たときは小さな、小さな箱で眠っていた。
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