俺も好きだよ。

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 全ては自分の独りよがりだ。  やっと掴んだこの手をもう絶対に話すものか。  律はチカの腕を引くと思いっきり抱き締めた。  「俺も好きだよ、チカが好きだ」  親父がそうだったように、自分もチカを悲しませる日が来ないとは限らない。でも、母親が泣きながら言った「幸せだった」という言葉こそが両親の幸せの形だったのだ。  今、チカを手放せば幸せの形そのものが粉々に崩れてしまうだろう。みんなそれぞれ、幸せの形は違うのだ。  小さく震える肩を抱き、その前髪に顔を埋めた。  ふいに、「お嫁さんにしてやる」と照れながら言った遠い日の幼い自分が甦る。そうだった、もうずっと昔から自分にはチカしかいないのだ。  もう間違えない。震える肩を抱く腕に力が入る。  「なぁチカ、今からユリんとこにラーメン食いに行かねぇ?」  「なんで今ラーメンなわけ?」   泣き腫らした真っ赤な目が不満げに律を捉える。  「なんでもだよ」  再び真っ赤な瞳ごと抱き寄せる。  何度だって抱きしめる。  律とチカの幸せの形はここにある。今この時を大切に育てていこう。  かつて両親がそうであったように。
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