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その夜、もちろん怒られた。
けれど両親は、最後は半ば呆れて“もらってきちゃったもんはしょうがない”と飼うことを許してくれた。
母は、とれたての卵が取れるかもねとどこか楽しそうでもあった。
こうして、我が家には“ヒヨ”という家族が増えた。
ヒヨは、すくすくと成長し、あっという間にニワトリになった。
毎日していた寄り道もせず、私はまっすぐ家に帰った。
両親が共働きで兄弟もいない私にとって、ヒヨは家族であり、兄弟であり、何でも話せる親友となっていった。
私が歩くと後を追いかけて歩き、私が走ると飛べないのに羽をばたつかせて助走をつけようとする。
ぶどうを分けっこしたり、一緒に寝たり、卵は産まなかったけど、毎日がとても楽しかった。
けれど、そんなヒヨとの生活に、突然終わりが来た。
ある日、学校から帰ると、ヒヨの姿がなかった。
いつもはいないはずの母が帰宅していて、私が帰って来ると洗い物をやめ、机の前に座った。
「あれ、ヒヨは?」
「ミキ。ちょっとここに座って」
言われるまま母と向き合うカタチで座ると、母が話し始めた。
「ヒヨはね、ユリちゃんのおじいちゃんのお家に行ったの」
「え?なんで?」
「ユリちゃんのおじいちゃんはニワトリをたくさん飼っててね、ヒヨも仲間に入れてもらったの」
「どうして?ヒヨはうちの子でしょ?」
「そうだけどね」
「卵を産まないから?」
「違う。ヒヨは卵を産まないでしょ?それは、ヒヨがオスだからなの」
「それは知ってるよ。前にユリちゃんに聞いた」
「じゃあ、コケコッコーって鳴くのはオスだけなのは知ってる?」
「え、知らない。オスだけなの?」
「そう。ヒヨもね、このところずっと朝早くから大きな声で鳴くの。だからこの前ね、近所の人に怒られちゃったんだ。うるさいからどうにかしてって。そこにユリちゃんのおじいちゃんが声をかけてくれて、家で預かるよって言ってくれたの。それで今日、ヒヨをユリちゃんのおじいちゃんの家に連れて行った」
「ひどい……勝手に連れて行くなんてひどいよ!」
「でも、ヒヨは同じニワトリの仲間と一緒にいるんだよ?仲間と一緒にいた方がヒヨだって楽しいかもしれない。それに、ユリちゃんのおじいちゃんの家は近いんだし、すぐに会いに行けるでしょ?」
「そうだけど……ダイの時だって、お母さんもお父さんも勝手に連れてったじゃん」
「ダイの時は、歳のせいでもう弱ってて、お水も飲めないしご飯も食べられなかったから、ああするしかなかったの」
「……ヒヨは元気だもん」
「そう。ヒヨはまだまだ元気。いつでも会いに来ていいっておじいちゃんも言ってたし、ヒヨと離れ離れになったわけじゃない。うちにいるより鶏らしく生きられると思うな」
「……」
私はその日、母と口をきかなかった。
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