届かない君

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   テスト期間を無事にやり過ごし,チカは部活に復帰した。  チカの所属する写真部は毎年秋の学生コンクールに作品を出展する。  歴代の入賞者の中には卒業していった先輩部員も多く名を連ねる。  審査員の中には有名な写真家もいるので、皆本気で賞を取りに来る。  夏休みには合宿と銘打った決起大会が恒例行事となっている。  部員は8名と少数で、部活というより同好会のような規模だがアマチュアカメラマンである顧問の友人が、週1で熱心に指導してくれるおかげで少人数なのが逆にありがたい。  遠くで誰かが自分を呼ぶ声にハッと我に返った。  大丈夫か〜、とみんなが笑いながらチカを見ている。  どうやら随分前から声をかけられていたらしい。  今日は写真部の部室として使われている視聴覚室で、コンクールに出店するテーマを話し合っていたのだった。  ユリが心配そうに覗き込んできた。  ユリは中学一年の時にチカが通う中学に転校してきた友人で、サバサバした性格の人気者である。  湿っぽいのを嫌うので、彼女の周りで女のいざこざのようなものは聞いたことがない。  そんなユリのことをチカはとても気に入っている。    
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