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届かない君
「優勝したらお嫁さんにしてやる! 」
顎先をツンとこちらに向けて得意げに立つ生意気な少年。
小学校に入って初めて律がレースに参戦すると聞いた日、絵に描いたようなやんちゃ坊主、律は恥ずかしげもなく公言していた。
一方チカの方も
「絶対律のお嫁さんにしてよ! 」
と言い返し自分が放り投げた言葉の顛末に顔面を真っ赤に染め上げる彼に色を添えた。
あらまあ、と幼い子供たちによる愛情劇を微笑ましく冷やかす親たちに、なんだよ、と言って口を尖らせた律は未だ真っ赤なその顔を伏せながら今度はチカにだけ聞こえる声で
「約束だぞ」
と言った。
人気者の王子様にプロポーズされたお姫様気分のチカは、その時から律のお嫁さんになる日を指折りかぞえている。
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