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チカと律は近所に住む幼馴染みだ。
律は学校が終わると真っ直ぐチカの家に来る。正確には作業所にだ。
正志の真似をして工具を持つ幼い頃の彼の目は、ゆらゆらと潤んだように澄んでいた。
正志はあれはこれはと聞いてくる幼い律に工具の扱い方を丁寧に教えた。
何年もそんな日々が続いた。
一人で留守を過ごせる年齢になってからも、生活スタイルはほぼ変わらずこうして律はチカの家でバイクと共に時間を過ごす。
時の経過はチカだけでなくチカの中に居続ける律という存在も成長させた。
ある時、下級生に告白された律はレースをしている以上誰とも付き合えないと言う理由で相手を盛大に振った。
友人伝いにそれを聞いたチカは、これまで育て続けてきた律への想いに蓋をすることになった。
そして幼馴染みという現実だけが途方もなく長い平行線となって現在も2人の間に延びている。
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