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えぇ、いるわよと言って、クラスメイトは教室の奥に目をやった。よもぎも教室を覗き込む。賢一もそれに気づいて、教室の入口まで歩いていった。
「どうした?よもぎ」
「あっ、ごめんね、帰るところだったのに…賢一、数学得意だったわよね?わからないところがあるんだけど、教えてもらってもいい?」
「あぁ、いいよ。立ったままするのもあれだから、賢二の席に座れよ」
「ありがとう♪」
賢二の席に行き、賢一とよもぎは向かい合って座った。
よもぎは教科書の例題の答えを書いたノートを開き、答えが合っているかと、わからない問題を教えてほしいと言った。わかったと言って、賢一はノートを見た。
「うん、(1)と(2)は合ってる。(3)はちょっと難しいよな。これは…」
賢一が(3)について説明する。説明がわかりやすく、よもぎもすぐに答えが出せた。もう終わっちゃった…と思ったよもぎは欲が出て、理科も…と言うと、賢一はいいよ暇だしと言った。
賢一が理科の教科書を見ながら問題を出し、よもぎが答えた。
「正解!」
「やったぁ♪」
「ぶぅー!」
「えーっ、何だっけ?」
二人は勉強しているつもりだったが、傍から見ると、恋人達の楽しいお喋りのようだった。そんな問答を続ける二人に、近くで社会のプリントをしていたクラスメイトが皮肉を込めて言った。
「いーよなー、受験終わって “暇” な奴は。女といちゃラブできてさ」
そう言ったのは、昼休みに自分達の褒美のことで盛り上がる賢一と賢二をチラ見した田中だ。カチンときた賢一は田中を睨んだ。
「いちゃラブなんかしてねぇよ!勉強してただけじゃねぇか!」
「傍から見たらいちゃラブなんだよ!さっきも言ってたじゃん、“立ったままスるのもアレだから”って」
「やめろよ、女子の前で!」
「カッケェ~!やっぱ “賢” こさ “一” 番の奴の言うことは違うわぁ~!…」
「やめて!」
言い争う二人を、よもぎが止めた。
「…騒がしくしてごめん。帰るよ」
「帰んなくていいよ!悪いのはこいつだ!」
賢一がそう言ったがよもぎは首を振り、教科書とノート、筆箱をカバンにしまって教室を出ていった。教室に残っていたクラスメイト達が、固唾をのんで様子を見ていた。
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