こういうことだったのかな。4

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体育館に入ると、すぐ左のところで吹奏楽部がカノンを演奏していた。賢一は歩きながらフルートの部員達に目をやった。一人一人顔を見ていくと、…指揮に合わせ、フルートを吹くかなでがいた。 『いた…!』 かなでも、フルートを下ろすと賢一が見ていることに気づいた。賢一が小さく笑って頷くとかなでも軽く会釈し、また指揮を見てフルートを構えた。少しでも二人を関わらせたくない賢二は、早く行け、と賢一の背中をつついた。 三年生が全員揃い、席に着いた。校歌斉唱、卒業証書授与など、式次第に従い予行が進められていく。一通り予行した後、学年主任の教師が明日の連絡をしてそのまま解散となった。 三年生達が体育館を出ていく。賢一と賢二も、生徒達の波に混じって出口に向かった。吹奏楽部の部員達は、楽器の片づけのため三年生が全員外に出るのを待っている。かなでは賢一と賢二を探した。これまでのことを詫びるために。 何度も三年生達を見回し、出口付近にいる二人を見つけた。早くしないと帰ってしまうと、かなでは椅子から立ち上がり、日野に向かって、部長、ちょっと抜けます!と言って二人を追いかけた。 かなでは三年生達の隙間を縫うように走って、下駄箱に行った。だが二人の姿はなく、下駄箱を通り抜けて外に出た。すると、前方に正門へと歩いていく二人が見えた。 声をかけようとして、かなではその言葉を飲み込んだ。二人の前に、よもぎと里見がいたからだ。賢一と賢二、特に賢一には今の思いを伝えなければと思い追いかけてきたが、よもぎと里見の二人に対しては心の準備ができていない。 駅での大暴露以来の顔合わせ。この二人にも厳しいことを言われるだろう。でも二人にもきちんと詫びなければと思った。かなでは覚悟を決め、四人のところへ走っていって名前を呼んだ。 「賢一先輩!賢二先輩!よもぎ先輩!里見先輩!」
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