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名前を呼ばれ、四人は一斉に振り向いた。声をかけたのがかなでだとわかると、賢二、よもぎ、里見は冷たい目を向けた。刺すような視線に、かなでが立ち竦む。張りつめた空気を変えようと、賢一が言った。
「クラブ、復帰したんだ。よかった」
「あっ、はい…」
クラブ復帰って何と里見が訊く。賢一はあれからかなでが休部していたことを話した。里見(とよもぎ)は少し驚いたが、(辞めればよかったのにと言おうとして)口を開きかけたのを遮りまた賢一が言った。
「あの、何か俺達に用があるんだよね?」
「はい…駅でのことを、謝りたくて…」
眉をひそめますます険しい表情になった三人を見て、かなでがビクッとした。怖くて口が開けられない。だが今を逃せばきっと一生謝ることができないと、かなでは目を閉じて一つ息を吐き、口を開いた。
「賢一先輩。先輩の気持ちを弄んでしまって、すみませんでした。…賢二先輩。大切な兄弟を傷つけてしまって、すみませんでした。…里見先輩。大切なよもぎ先輩を泣かせてしまって、すみませんでした。…よもぎ先輩。先輩の想いを軽んじるようなことを言ってしまって、すみませんでした。…本当に、本当にすみませんでした……!」
かなでは涙を零しながらそう言って、四人に深く頭を下げた。だが体を震わせ、頭を上げないかなでを見ても、三人の気持ちは変わらない。里見が厳しい言葉を向ける。
「丸山じゃねぇけど、あんなことやっちゃいけないって、何であの時点でわからなかった!それこそ今の気持ちがあの時のお前にあれば、よもぎが、俺達があんな風に傷つくことはなかっただろ!」
「数日で他の人に想いが移ってしまったことは、自分でも最低だと思った。でも、賢一への想いも、睲への想いも、私の本当の想いよ。本気で好きだったし、本気で好きなの。それを、あんなことされたら、あんただって辛いでしょう。もう絶対あんな風に人を傷つけないで!」
よもぎも自分の思いをはっきりとぶつける。…そして賢二も。
「賢一は、これからのお前を信じると言った。俺がどんなに“西本を許さない”と言っても、思っても…お前、賢一の気持ち裏切るなよ。この先少しでもそんなことしたらただでは置かないぞ!!」
三人の言葉に、かなでは頬を濡らしたまま頭を上げ、はい、と答えた。
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