こういうことだったのかな。4

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卒業生が揃うと、全員起立して国歌、校歌を斉唱し、卒業証書の授与が行われた。一組から順に担任が卒業生の名前を読み上げる。五組の番になると村上も名簿を開き、一人一人名前を読み上げた。 「三年五組。…赤川ゆいか」 「はい」 「上野誠司」 「はい」 少しずつ、自分達の番が近づいてくる。賢一と賢二は膝の上の両手に力が入った。賢一はワクワク、賢二は少し緊張している。そして村上がこちらを見て高梨賢一、と名前を読み上げた。 「はいっ!!」 高々と手を上げ、大きな声で返事をして賢一は立ち上がった。他の卒業生や賢一を知る在校生、保護者達のクスクス笑う声が体育館に響いた。賢二が慌てて賢一っ、と言った。その様子にも笑いが起きた。 やってくれたわね、と苦笑いしながら、村上は続けて賢二の名前を読み上げた。賢二は赤くなりながらはいと返事をして立ち上がった。皆があれ、自分は何もしないの~?(ニヤリ)という目で賢二を見た。 その後も名前が読み上げられ、五組の卒業生が全員立ち上がると…村上は言葉を続けた。 ―――昨日生徒達にした“提案”。 「そして…三年五組にはもう一人、生徒がいました。私達は昨年、その生徒と辛いお別れをしました。しかし彼も、クラスで共に学び、笑い合った仲間でした。よって、この生徒も卒業生と認め、名前を読み上げさせていただきます。…昴、喜実夜」 「はいっ!!」 村上が名前を読み上げ、クラスメイト全員で大きな声で返事をした。保護者席の喜実夜の両親は、この場に息子がいない寂しさを感じたが、村上とクラスメイト達の思いが嬉しく、涙が込み上げた。 「計三十五名。代表、和田昇」 「はい」 呼ばれた和田が返事をして前に進み、壇上に上がって校長から卒業証書を受け取った。ミスすることなく席に戻ってきた和田は、ほっとしてはぁ、と息を吐いた。賢一や賢二、クラスメイト達はそんな和田を覗き込んでニッと笑った。
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