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「やっぱりだめね…毎年泣かないようにって思うんだけど」
そう言って指で涙を拭う村上を見て、生徒達は皆顔を見合わせて笑った。そして、このクラスでよかったと言った。何より、担任が陽奈ちゃんでよかった、と。そんな生徒達を見て村上は更に涙が込み上げたがすぐにそれを拭って強気なところを見せた。
「あんた達私を泣かせるつもり?百年早いわ!」
村上の言葉に皆手を打って大笑いした。…その時、賢一がデジカメを高々と揚げ、陽奈ちゃん、写真撮ろ
っ!と言った。その言葉に皆おおっ、撮ろう撮ろう!と言って机を左右に寄せ、三列に並んだ。賢太郎が撮影を買って出、カメラを構えた。
「はいみんな、こっち向いて!撮るよー!はい、チーズ!」
「イェ――イ!!」
―――フレームに収まった村上、生徒達は皆、最高の笑顔だった。…賢二の手の中にいる喜実夜も。
賢一と賢二は下駄箱で靴を履き替え校舎を出ると、少し早足で正門へと向かった。卒業式が終わったら吹奏楽部の卒業生は正門に集まることになっているからだ。正門に行くともう何人か集まっていた。
とうとう卒業しちゃったなぁ、と皆で話す。そしてクラブでの思い出を語り合った。賢一がコンクールに出場できなかった話になった時、よもぎが少し心配そうに賢一を見たのを見て里見は少しムッとした。賢一はそれに気づかず、湿っぽくならないよう明るく振る舞っていた。
「先ぱーい!」
楽器の片づけを終え、翔太が走ってきた。えりかも走ってくる。その後ろを、雅紀がズボンのポケットに両手を突っ込んで歩いている。
「おー翔太、お疲れさん。あんがとな」
「えりかもお疲れ様」
「いいえ。卒業、おめでとうございます」
「おめでとうございます」
翔太とえりかがそう言うと、皆おう、ありがとうなどと言葉を返した。やっと着いた雅紀はチラと賢二を見るとふいっと横を向いた。少し拗ねてる…?と思い、賢二は笑ってしまいそうになるのを堪えた。だが内心、寂しく思ってくれたのが嬉しかった。
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