神のいかずち

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 白石は地面の黒い板を蹴りながら話した。 「暑いです、隊長」 「暑いのは私も同じだ。ここは暑いと事前に話したはずだが、白石二等兵」 「それにしても暑過ぎます。必ず厚底ブーツを着用するようにと言われていた意味がわかりました」 「この地域を、もし素足で歩いたら、それだけで足が使えなくなるからな」  隊長は白石に言葉を返すが、こちらを振り向くことなく前に進む。  隊長も白石も女性の兵士だが、経験と知識で、隊長は白石を上回っていた。躊躇なく前に進むのを見て白石もそれに続く。熱くて黒い板がどこまでも続いていた。  しばらく歩くと、茶色の揺らめく物体が見えた。 「あれ、何ですか、ゆらゆらと。手招きしているような、遊んでいるような」  白石は驚いたが、隊長は冷静だった。 「奴の一部が見えてきたな」 「あれが、奴の一部なのですね」 「あちらの世界では『かつおぶし』と呼ばれている」 「かつおぶし……禍々しい響きですね」  白石がそう言うと、隊長はペンを取り出して、「かつおぶしは禍々しい」とノートに記した。  白石が書かれることが恥ずかしくなって、止めようとしたが書き終わった後だった。 「問題ない。新米兵士からあれがどう見えるのか上官に報告する意味もあるから記したに過ぎない」 「余計に問題だと思いますが」  歩みを進めると、鰹節はさらに、大きく見えるようになった。濃い香りが二人に去来する。 「なんですか、この香り」 「奴が発する香りだ、慣れれば問題ない」
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