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また別の日。それが、今。
冒頭の会話に戻る。
「ねぇねぇ、かか。"ていと"ってどんなところ?」
「えぇ…また?」
もう何度目だろう、この質問は。咲は私と旋が帝都から来た事を知っている。私はもっと大きくなったらで良いと思っていたのだけれど、旋が長々と『恋物語』を語ったおかげで、帝都に憧れを抱いたよう。
『自分も帝都に行ったら、こんな恋が出来るんだ』と。
だから、三歳の娘は私に帝都について聞きたがる。前は答えていたけれど、最近は言う事が少なくなってきて困っているのだ。
「ととに聞いたら、教えてくれると思うけれど……」
「やだやだ!かかのおはなしがいいの!」
また目が金色に染まる。今度は執念深く濃くなった。
「なんで?」
「だってね、ととはね?」
次は何を言うのか、見守っていると。
「ととは!『陽は可愛い』としかいわないの!」
かかのことばっかりなの、と頬を真っ赤に染めた。
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