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「って、咲が言っていたけど本当か?」
「本当だ」
その夜、子供達が寝静まった後。夫婦の部屋でそう旋に問い掛けて……もとい問い詰めて居た。旋の黒い着流しの胸倉を掴んで、私が膝の上に乗り上げている体勢。
「お前は母親である前に、俺の妻だ。いつまでも可愛いに決まっている」
「……そう言えば私が絆されるって思ってるだろ」
私は出会った時から六年が経っているのだから、少しは変わったと思っている。二十三になったし立派な大人だと思っているのだけれど。
旋は何も変わっていない。
その白い髪も、きめ細やかな肌も、声も、特徴的な金色の目も、何も変わっていない。てっきり妖力が無くなったら、一気に千年分老けるのかと思っていたけれどそんな事は無く。まだ有り余っているのではと疑うぐらい、若いまま。
実際の年齢は知らないが、千歳は超えているらしい。でも今のこの土地では、『二十九歳』で通している。誰も疑わない。
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