3人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
人獣館には人館と獣館に別れており、食堂や会議室などは共に使う。
それぞれ表向きの大臣とかが館長を務める第一館、表向きでは活動せず裏で仕事を回す第二館から第五館がある。
第一館は人間と獣人の大臣とかお偉いさん。第二館、第三館が人間の働く人館で第四館、第五館が獣人の働く獣館だ。
第一館以外の仕事内容は雑用が中心だが世間から見ればエリートの部類に入る。
「副館長、館長はいましたか!?」
「いませんよ。館長が確認しないといけない書類今日までなのに何やってんだか……」
第二館で共に仕事をしている研究員にそう言えば、あちらも深いため息をついた。
エリートは蓋を開ければ変人の集まりだ。
下手したら一生使わない、というかほぼ百パーセントの確率で使わない言葉を普通に会話で使えるまでに勉強してるような奴らの集まり。
獣人は家柄的なものがあるらしいが、それがほとんどない人間は様々な何かしらで獣人に関わる研究をしている研究馬鹿なのだ。
うちの、第二館の館長はその中でも随一の研究馬鹿で。
優秀な実績で館長になったもののやりたい仕事しかいないような人なのだ。
館長の補佐で副館長になったような私は館長の仕事をしているものの、限界がある。
館長の確認が必要な書類があるからだ。
それなのに館長がいない。
どこ行った。
「引き続き探してください。獣館の方をお願いできますか?」
「はい!」
お願いすれば、獣館の方に駆け出していった。
館長は獣人研究馬鹿なので獣館にいる可能性もある。
あとは知り合いをあたるしかない。
とはいえ、第二館は基本的に館長が優秀なのに問題を起こしがちなので館長しか知らない人も多い。
あれだね、メインキャラクターのそばにいる脇役Aみたいなやつ。あれが私。
流石に他の館長とか副館長には覚えられてるけどそれ以外には脇役Aだと思われてるだろう。
実際に女性職員には「目立たない」とか
「モブじゃん」とか言われますよ。
言われるんですよ!
だから私が聞いたところで反応してくれる人がどのくらいいるのか……。
私はため息をつきながら館長の捜索を再び始めた。
最初のコメントを投稿しよう!