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よく晴れた春の日。
カナちゃんはぼくが運ばれてくるのを、今か今かと家の外で待っていた。
カナちゃんは、ぼくの乗ったトラックが見えた途端に、ぴょんぴょんその場で飛び跳ねた。釣られてぼくも跳びそうになって、あわてて我慢した。ピアノが跳んだらびっくりされちゃうからね。
ぼくは、あたたかな日の差し込むリビングに置かれることになった。
運び込まれるぼくを見て、カナちゃんは目を輝かせる。
「カナのピアノ!カナのピアノ!」
カナちゃんは、その日からさっそくぼくを弾き始めた。
ド、レ、ミ、ファ、ソ…
たまごを優しく握るみたいに軽く丸めた手で、ゆっくりゆっくり弾いていく。
指先から、カナちゃんのわくわくが伝わってきて、ぼくも張り切って音を奏でた。
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