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6
家に着いた時、わたしはすっかり怒っていた。
怒ったまま野菜を切り、怒ったまま鶏を焼いて、
怒ったままペットボトルをお湯に沈めた。
何がよく行くだ、何がお菓子セットだ。
こっちはお菓子よりお値引きの鶏肉だもんね。
320円のシャンプーの香りとかさせちゃって、ペットボトルと一緒にお風呂に入ったこともないだろうに。
重い2リットルを沈められて、湯船がどぷんと唸る。
「今日は随分と豪快ねぇ」
野菜炒めの玉ねぎを母がつまみ上げたのは、
午後8時半だった。
母の長い箸の先で、
玉ねぎは元の形に近い曲線をしている。
照り焼きの鶏を食べようとしていたわたしは、
箸の先をちょっと変えて自分の野菜炒めをつついてみた。
とても噛み応えのありそうなキャベツの芯が転がり出る。
「今日は夕飯作るの、大変だった?
無理しないでねあき、
たまにはお弁当買ってもいいんだから。
連絡くれれば、外食だってできちゃうわよ」
わざと明るく言う母に
「大丈夫だよ」と慌てて返す。
野菜炒めがこうなったのは、
一番怒っていた時に作ったからだ。
玉ねぎがしゃくしゃく噛まれる音を聞きながら、
わたしはキャベツの芯を箸でころりと転がした。
不意に──自分の叫び声が蘇った。
女神様のバカぁっ、と。
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