7

1/3
前へ
/14ページ
次へ

7

窓のそばのミンミンゼミで、 先生の話はよく聞こえなかった。 でもきっとプリントの通りだろう。 エアコンの効いた教室とも、 これでひと月ほどお別れだ。 重いランドセルとの道すがら、 わたしは何度も空を見上げた。 濃い青空と掴み取れそうな白雲が、 じりじりとアスファルトを焼いている。 雨の気配は全くない。 夕立は夏の風物詩だろうに、おかげでわたしは、 今日もあの曲の名前がわからない。 汗みずくの身体を麦茶で冷やして、坂道をのぼる。 広告によると、今日はなんと牛肉が安いのだ。 坂上スーパーの空調はキンキンで、 入った瞬間にわたしは大きく深呼吸した。 牛肉をかごへ入れ、 他の目星もつけながらタイムセールの開始を待つ。 のんびり回っていると、 お菓子売場に行き当たった。 目立つ棚に、 スナック菓子の3個セットが盛られている。 その中のポテトチップスに足が止まった。 ペパーミント味。 眉を寄せてちょっと屈み込んでいると、 左側から1セットつまみ上げられた。 何の気なしに首を回してしまう。 「ミントかぁ。嫌いじゃないな、爽やかだし。 ねぇ?」 いたずらを仕掛ける男の子みたいな笑い方で、 女神様がそこにいた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加