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「わっ」と叫んでから、 わたしは慌てて口を押さえる。 女神様はピンク色のブラウスを着ていた。 襟元にリボンで、スカートで、 背中には黒いリュックだった。 どう見ても、高校生のお姉さんだ。 わたしの反応などお構いなしに、 少し低い声が笑う。 「どう? 女神様とポテトチップス、 良い組み合わせじゃない?」 顔が熱くなる。 やっぱりちゃんと聞こえていた。 わなわなと震え始めたわたしに、 女神様はようやくちょっと顔をして、 「あの時さ、笑っちゃった。 女神様なんて、あたしには照れくさいもん。 でも悪い気はしなかったよ。 ね、いつもあそこ通るの?  じゃああたしのヴァイオリンも聴いてた?  誰か聴いてくれるかなぁと思って、 晴れた日は窓を開けてるんだ」 なだめ半分、照れ隠し半分の声を聞きながら、 わたしはそれまでと違う形でどきどきしていた。 女神様が目の前にいて、 バカって叫んだことを怒っていない。 訊ける。 あのヴァイオリンの旋律が、何て曲か。 そろそろと口から手を下ろす。 あの曲の名前、何ですか。 一言を脳内で何度もくり返す。 店内を流れる夏の歌がふと途切れた瞬間に、 思い切って口を開いた。
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