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横顔がひらりとわたしを向く。 黒い瞳と眼が合った途端、 わたしは頭まで真っ赤になった。 「わっ!」と口が勝手に叫ぶ。 同時に、足はガレージを飛び出した。 「待って!」 背後からの声に、今度は急ブレーキをする。 ぼとぼとと降りかかる雨の感触を、 間髪入れず掴まれた腕の感触が押しのける。 「雨宿りでしょ、いていいよ。 ただの夕立だろうし」 腕を引かれて、ガレージへ戻される。 濡れたTシャツが肩に張り付く。 腕を掴む手をたどると、 ふんわり眩しい半袖のブラウス。 開かれたままの赤い傘。 頭がくらくらして、何も返せない。 あの女神様が、わたしに話しかけているから……、 いや、違う。 「すぐに()むよ、それまでここにいな?  うちは構わないからさ」 仲良しを相手にするように、 女神様は手を離してにっこり笑う。 その、笑い方。話し方。声の感じ。 全部違った。 わたしの “女神様” とは、全部。 女神様は、 こんなにいたずらっぽく歯を見せて笑わない。 ちょっぴり低い、男の子みたいな声は出さない。 話し方もだ。 これではクラスの女の子達と変わらない。
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