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#4 新藤歩《アユム》
ボクの名前は、新藤歩。今年の春に成人し地元の大学へ通っている。
口の悪い友達からはポーと呼ばれている。歩という字が『ポ』と読むからだ。
いわゆるドルヲタで彼女はいない。巷の噂ではドルヲタとアニヲタの七割強は、生涯ヴァージンボーイだと言われている。そんな噂はウソだとは思うが、ボクも例外ではなく童貞だ。
情けない話しだが彼女いない歴、生まれてからずっとだ。
そんな時、ボクの周辺でも激震が走った。
今朝【日本絶滅】というネットニュースが流れた。
このまま手を拱いていると日本人は絶滅するらしい。
ただちに政府も新政策を打ち出した。
そのひとつが女子高校生結婚法案だ。
そしてもうひとつがマイナンバーカードを利用した新たな『マッチングアプリ』だった。
独身の男女なら無料で気軽にマッチングできるとあってボクもさっそく加入した。
そしてその夜、連絡があったのが姫乃樹ルナからだった。
風呂に入り、アイスコーヒーを飲みながら寛いでいると不意に着信音が響いた。面倒くさいと思いながらスマホを手に取った。着信画面には非通知と表示されている。
「ううゥン」どうしようか。
一瞬、躊躇ったが、また続けて着信音がした。取り敢えずスピーカーにしてみた。
「もしもし」
『よォ元気、ポー?』
聞いたことのない女の子の声だ。アニメ声で人懐っこい。
「え?」
誰なんだ。この娘は。
まったく声に聞き覚えがない。新手のオレオレ詐欺だろうか。それともハニートラップの一種なのか。
『ちょっとヤバくって。これから、そっち行って良い?』
まるで旧知の仲みたいに馴れ馴れしく甘えてきた。
「今からですか」
時計を確かめると優に十時を回っている。女の子が一人で訪れるには少し遅い時間だ。
『じゃァ、すぐイッちゃうね』
甘えた口調なので、なんとなく卑猥な言い方だ。
「えェ、もうイッちゃうんですか?」
『なによ。すぐにイッちゃうんだから。ルナは』
「いやいや、そんなすぐに来られちゃァ、困りますよ」
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