10人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
#6姫乃樹ルナ
「姫乃樹ルナだよ。決まってるだろう」
美少女は胸を張って応えた。
「えェ?」
決まってるって。何がなんだろう。
まったく意味不明だ。
「悪いけど、しばらく厄介になるから。遠慮なく上がらして貰うよ」
ボクのことなど無視して美少女はドンドン家の中へ上がり込んだ。
「ちょっと?」
突然、深夜にやって来て見ず知らずの他人の家へ上がり込むなんて非常識にもほどがある。
ルナと名乗る美少女は、まるで自分の家のようにキッチンへ行きアイスコーヒーを作り始めた。ボクは彼女の背後から恐る怖る訊いた。
「しばらくって、どのくらいですか?」
今夜、ひと晩だけなら構わないけど。
しばらくなんて、まったく初耳だ。ボクの方にも都合がある。それにしても、この娘は本当にボクの家へ泊まる気なのか。女子高生が独身男性の部屋へ泊まって危険は感じないのだろうか。
「ンうゥ、そうね。夏休みの間かな」
「夏休みの間って、そんなに?」
あと一ヶ月以上もある。本気でそんなに泊まるつもりなのか。
「あ、気にしないで。ルナはどこでも寝れるタイプだから」
満面の笑みを浮かべ、グラスに氷を入れコーヒーを入れて、そこへミルクを注いだ。
「でも女子高校生でしょ?」
「そうだけど。知らないの。女子高校生結婚法案ッて。女子高校生も結婚できるようになったのよ」
「それは閣議決定しただけで法案が通ったワケじゃないよ」
「ふぅン」気のない返事だ。ようやく出来たアイスコーヒーを美味そうにノドを鳴らして飲んだ。
「だって夏休みじゅうッて、そんなに長いこと泊まってたら親御さんが心配するんじゃないの?」
ボクは気を使って訊ねた。
「はァ、ババァなんか知るかよ」
美少女はボクを睨んだ。
「ババァって?」
「るっせぇな。ババァって言えば母親だろ」
なんとも口が悪い。顔はキュートで愛くるしいのに、やっぱりヤンキーなのだろうか。
「お母さんですか。親子ゲンカでもしたんですか?」
「親子ゲンカもなにもルナの元カレとデキちゃって同棲始めたんだよ」
「えェ、マジなんですか。お母さんが元カレとデキちゃったんですか?」
ボクは呆れて聞き返した。
「信じられるかよ。イケメンの元カレは毎晩、ババァと合体ライブでバッコンバッコンなんだぜ」
「合体ライブって?」
「なんだよ。ポーはヴァージンボーイか」
「えッ、ヴァージンボーイ?」
「ッるせえェな。全部、説明させる気か。この童貞ヤローが!」
「うッううゥ」
返す言葉がないほど酷い言われ方だ。
最初のコメントを投稿しよう!