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「五分前か。まだ博也は来てないようだな」
ベンチに座って辺りを見渡し、異常な光景だと気づく。いつもは家族連れで賑わう土曜の昼間なのに、人の姿がまったく見当たらない……いや、辺境の地に居る原住民のような男が一人だけ立っていた。頭には冠、手には長い木の棒、首元にはドクロの首飾りを身に付け、服の代わりに動物の毛皮を着ている。
ここは日本だよな? 異世界に紛れ込んでしまったのか? あいつは公園の守護者? 自分で思ってなんだが、公園の守護者って何だ? 色々と推測してみたが、あいつとかかわってはいけない……それだけは確実だ。待ち合わせ場所を変えよう。目を逸らして刺激せず、公園を出て行くんだ。
俯いて呼吸を整えゆっくり立ち上がると、目の前に原住民が移動していた。終わりだ……最後に妻と息子の顔が見たかった……
「ヒサシブリダナ、タケシ」
「……お前、博也なのか?」
「オタガイニカワッタナ。タケシダトキヅカナカッタヨ」
別次元というレベルじゃ無いぞ!? お互いにじゃなくて、お前だけ変わりすぎだろ!?
「アノトキノヤクソクヲハタシニキタ」
約束?
「イッショニ、サーベルタイガーヲタイジスルンダ」
そんな約束をした覚えはない!
「サア、イコウ」
「ちょっと待ってくれ」
「マテナイ」
このままでは本当に終わりを迎えてしまう。こうなったら、あの能力を使うしかない。俺は掴まれた腕を振り解き、二十年前にタイムリープした。
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