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「おい、武史。聞いてるのか?」
どうやらタイムリープは成功したらしい。目の前に居るのは小学生の博也だ。どうにかして博也の未来を変えないと。
「ああ、ごめん。それで何の話だっけ?」
「有名な私立中学校へ行くから、もう会えなくなるなって話だよ。海外交流が盛んな学校なんだ。色々な国の言葉が話せるようになるかもね」
「そっ、そうか」
この話をしているということは、小学校卒業間近だ。辺境の地の原住民になった理由なんて見当つかないが、先ずは会話で探るしかない。何か切っ掛けを掴もう。
「海外交流って楽しそうだな」
「武史は動物が好きで模型をたくさん持っていたよね? サバンナにも交流会で行くらしいから写真をいっぱい送るよ。カッコいい模型の動物があったらお土産に買ってくる」
「ありがとう。でも、無理はしなくていいから」
「武史が動物の話をするから僕も好きになっちゃってさ。この前見せてくれたサーベルタイガーの模型がカッコいいよね。サーベルタイガーは絶滅したって言われてるけど、まだ未開の地で生きてると僕は思う。絶対に見つけ出して捕まえるんだ。大人になったら武史も一緒に探そう」
そう言えば、小学生の頃はライオンなど猛獣に憧れていた。その中でも特にサーベルタイガーは好きだったなあ……
「それだ―――!!!」
「うわっ!? びっ、びっくりした。いきなり大きな声出さないでよ」
思わず叫んでしまった。冷静になれ、俺。未来を変えるんだ。
「こっ、交流会はやめた方がいいぞ。サバンナなんて危険な場所は特にな」
「何で? 楽しみなんだけど」
「そもそも、お前は本当に有名な私立中学校へ行きたいのか?」
「別に行きたい訳じゃ無いよ。親が言うから仕方なく……」
「だったら反抗しろよ! 敷かれたレールに乗って何が楽しい? お前の人生だろ? 俺は……お前と一緒に居たい! これからも二人で馬鹿みたいに笑っていたいんだ!」
さすがに苦しいか? そもそも、俺自身が何を言っているのかよく分かってない。
「武史……分かったよ」
分かったの!? 自分で言っておいて何だが驚きだ。
「そうだよね。僕だって自分の未来は自分で決めたい」
その意気だ。頼むぞ、博也。
「じゃあ、父さんと母さんに言ってくる」
俺は博也の背中を清々しい顔で見送り、二十年後へタイムリープした。
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