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再会
振り返ってみれば順風満帆とまではいかないが後悔の無い人生を送っている。仕事に大きな悩みは無く、可愛い妻と息子にも恵まれた。反面、周りから見れば特筆するべきことの無い平凡な男……だが、俺は特殊な能力を持っている。それは、タイムリープ。分かり易く言うと、二十年前の自分に戻れる。でも、この能力を多用してはいけない。過去というのはほんの少し変えただけで想像できない未来へと変化してしまうからだ。人生をやり直したいと思うほど不幸な状況ならまだしも、幸せな今を変えてしまうのはリスクが大きすぎる。人によっては喉から手が出るほど欲しい能力だろうが、俺には必要ないものだった。そんな俺に子供の頃の友達からSNSで連絡が入る。
「博也か……懐かしいな」
博也は友達の中でも特に気が合い、小学生の時はいつも一緒に遊んでいた。しかし、有名な私立の中学校に入ると言って転校してからは稀にSNSで見掛ける程度だ。そんな博也が久しぶりに俺と話したいらしい。断る理由も無かったので週末に会う約束をした。お互いの近況は知らない。博也はどんな大人になっているのだろう? 頭の良い奴だったから庶民の俺とは別次元の人になっているかも。そう考えると楽しみになってきた。そして約束の日になり、待ち合わせ場所の公園へ向かう。
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