第2章 隠れてキス

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放課後。 教室の掃除を終えて、私はゴミ捨てに来た。 ゴミ捨て場は、学校の裏手にあった。 一人ゴミ箱を持って、校舎を出た。 その時だった。 「由乃。」 理人の声が聞こえた。 体がビクッとなって、周りを見渡すと、フェンスの向こう側に、理人がいた。 「理人。」 私は、フェンスに近づいた。 「何で、こんなところにいるの?」 「由乃に会いたくて。」 私に会いたくて? ちょっとだけ、嬉しくなった。 けれど、直ぐに不安になった。 理人が私に会いたくなる時は、彼の身に、何かあった時だ。 「理人、何かあったの?」 「ううん。ただ、顔見たくなっただけ。」 「それなら、家に帰れば、会いたいだけ会えるじゃん。」 彼は、首を横に振った。 「家には、親父もお袋もいる。」 胸が痛くなった。 理人は、私を一人の女として、見ている。 姉じゃなくて、普通の女の子。 「理人、あのね。」 このフェンスが、私達の間を塞いでくれればいい。 「やっぱり、私達。愛し合っちゃいけないと思うの。」 すると、理人はフェンスの穴から、腕を出した。 「由乃。手、貸して。」 ゴミ箱を持っていない手を、理人に差し出した。 理人は、私の手をぎゅっと、握ってくれた。 温かい。 理人の優しい気持ちが、伝わってくる。 「由乃。俺、この前言ったよね。由乃の事が好きだって。」 「聞いた。でも、私達姉弟(キョウダイ)だし。」 「そんな事、関係ないくらいに、由乃の事が好きなんだ。」 息をゴクンと飲んで、深呼吸をした。 「由乃……」 また理人の、切ない声。 この声が、私を惑わせる。
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