第2章 隠れてキス

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「理人……」 思わず、理人の手をぎゅっと、握り返してしまった。 その瞬間、グイッと引き寄せられて、フェンス越しに私達はキスをした。 その時、遠くから笑い声が聞こえて、私は理人を突き放した。 「困るよ……こんなところで……」 「何で、困るんだよ。」 私は顔を上げた。 「分かってるでしょう?こんなところでキスしてたなんて、変な噂がたったら。しかも、相手が理人だって、親にでも知られたら……」 「じゃあ、言えよ。親に。」 「言える訳ないでしょう!」 親に、理人とキスしたなんて言ったら、私達どんな扱いされるか。 でも、理人は反対に、泣いていた。 「俺達が、後ろめたい事してるからか?答えろよ!」 「そうよ!こんな事、誰にも言えないわ!」 「だったら、もっと怒れよ!俺の事、突き放せよ!!」 「そんな……」 私は、息を飲んだ。 「そんなってなんだよ。俺の事、蔑めよ。変態だって、罵ってくれよ!」 理人は、フェンスに両手をついて、息を切らしている。 「理人……」 そうだよ。 理人の言う通り。 もっと理人の事を怒って、突き放せばいいのに。 どうして、私はできないんだろう。 答えは知っている。 私も、理人の事が好きなのだ。 弟以上に、彼を愛しているからだ。 「……できないよ。」 理人が顔を上げる。 「できないよ。理人を突き放すなんて。」 「由乃……」 私は、ゴミ箱を置いた。 そして、フェンスの穴に手を入れ、理人の涙を拭いた。 「私も好きなの……理人の事……」 理人の瞳が、大きくなる。
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