第1章 ハジメテ

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二人で一緒に、洗濯物を家の中に放り込む。 「手伝わなくていい。早く買い物に行って来て。」 「いい、手伝う。」 理人は、頑固だ。 一度言いだしたら、意見を曲げない。 「仕方ないな。私が行くか。」 「だったら、俺も行く。」 「ええ?」 私が行くって言ったら、急に”行く”って言いだすし、一体何を考えているんだ?理人は。 「家事は、分担した方がいいって、お母さんがいつも言ってるでしょう?」 「二人でやった方が、早く片付くって、親父が言っていた。」 ものの見事に、両親の特性を受け継いだ私達。 仕方なく私は、リビングに座って、理人と一緒に洗濯物をたたみ始めた。 理人のTシャツ、理人の肌着。 一緒に住んでいる弟なのに、やけに男の匂いがして、新鮮だった。 理人は、結構モテる。 仲のいい女子も、何人かいた。 彼女はいないと思うけれど、大人の経験はしていると思う。 まだ中学生だった理人が、高校生の女の先輩と、家の前でキスしているところを見た事があったからだ。 兄弟なのに。 同じ屋根の下で、一緒に暮らしているのに。 理人との距離は、離れているように思えた。 「ねえ、理人。今日の夕食、何がいい?」 「ロールキャベツ。」 「OK。但し、期待しないでよ。」 私は立ち上がると、お母さんから預かったお金を、ポケットの中に入れた。 「制服で買い物に行くつもり?」 理人に言われて、自分が制服だと言う事に気づく。 「本当だ。着替えてくる。」 ポケットに入れたお金をテーブルの上に置いて、私はカバンを持って、二階への階段を駆け上がった。
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