第1章 ハジメテ

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自分の部屋に辿り着いた私は、制服を脱いで、服を探した。 その時だった。 「由乃、落とし……」 突然ドアが開いて、理人と目が合った。 「あっ……」 私は、下着姿だった事に気づいて、急いで前を隠した。 「ごめん。」 そう言うと理人は、タタタッと階段を降りて行った。 後には、顔を真っ赤にした私が残った。 変なの。 弟に下着姿を見られたくらいで、真っ赤になって。 私は、前を隠したその服を着て、ドキドキしながら、階段を降りた。 「理人、お待たせ。」 何事もなかったかのように、私は理人に声を掛けた。 でも彼は、何でもなかった事に、できなかったみたいだ。 「ごめん、由乃。落とし物、届けようと思って。」 理人の手には、私のキーホルダーが握られていた。 「でもよく考えてみれば、由乃が降りて来た時に、渡せばよかったんだよな。ごめん。」 「ううん。」 私よりも頭が良くて、間違う事が少ない理人が、私に3回も謝っている。 なんだか、可愛く見えた。 「じゃあ、買い物行こう。」 「おう!」 そう、私達はいつも一緒。 離れ離れになるなんて、考えもしない。 いつまでも、一緒なんだって、年甲斐もなく思っていた。 夜になって、夕食を食べ終えた私達は、一緒にテレビを観ていた。 「理人、先にお風呂入る?」 「うん。」 いつも通り、理人が先にお風呂に行った。 しばらくして、お風呂から理人の声がした。 「由乃!」 「なあに?」 重い腰を上げて、私は脱衣所に向かった。 「どうしたの?理人。」 「パンツ、持ってくるの忘れた。持って来て。」 「仕方ないな。」 私は口を尖らせながら、またリビングに戻った。
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