第2章 隠れてキス

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英吾は興奮している。 そうだよね。 こんな曖昧な相談、私を好きだって、言ってくれる人に対して、失礼だよね。 「実は、相手の人に、告白されてるの。」 「えっ……そいつ、一体何考えてんだよ。好きになっちゃいけない関係だって、知ってるのかよ。」 英吾は、良い奴だ。 私の相談に、真剣に乗ってくれる。 「知ってる。でも、そんなのは、理由にならないって。」 英吾は急に、黙り込んだ。 何かを、考えているみたいだ。 「由乃は、どうなの?」 「えっ……」 「由乃は、そいつの事、どう思ってるの?」 私が理人の事を? 今まで弟以上に、見て来た事ない。 「好きだけど、恋愛じゃないと思う。」 「友人として?」 「……うん。」 そしてまた悩む英吾。 もしかして、何か気づいた訳じゃないよね。 「どうしても、腑に落ちないな。友人として好きになれる関係なのに、好きになっちゃいけないって。」 ドキッとした。 「あの……あまり、深く考えないで。」 「相手に、彼女がいるとか?」 私達は、目をパチクリさせながら、見つめ合った。 「ふはははっ!」 「えっ、笑うとこ?」 私は涙を拭いて、思いっきり笑った。 「英吾。」 「ん?」 「有難うね。お陰で、元気出た。」 「うん?うん。」 なんだか、上手く言いくるめたようになったけれど、英吾のお陰で、吹っ切れた気がした。 これがおかしい事だって、理人にもう一度、言おう。 理人だって、私がこんなに悩んでいると知ったら、もう二度とあんな事はしないだろうって思う。 私は決心して、英吾と一緒に、屋上を後にした。
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