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1話 結果待ち
完全に流されている自覚はある。
このままじゃだめだってこともわかっている。
「じゃあ僕の家に入り浸ってくださいよ。鍵渡してるんですから。ここの三倍は広いですよ。こたつも買いますし」
「嫌です。外出するの面倒ですし。今日こそ拓己さんが勝手において帰った鍵、持って帰ってくださいよ」
「うわあ、傷つくなぁ。……じゃあ一緒に住みましょうよ。家賃もいらなくなるし、広いですよ」
狭い部屋ですいませんね、と内心言い返す。
あのエッチなグッズを取り揃えている店は趣味で、彼の本業はラブホテルの経営の方らしい。
祖父から引き継いで何個か持っているって最近聞いた。
『両親が面倒を見れないときはおじいちゃんと改修中のホテルで遊んでいた』と。
どの業界にもサラブレットっているんだなと逆に感心してしまった。
「一応好きな人いるんですけど」
「そういえば最近会ってるんですか?」
「来週こっちに来るらしいです。その時に会う予定です」
「そっか、楽しんでね」
拓己さんは私の残した水を一気飲みするとベッドサイドに腰掛けて長袖Tシャツを着る。
意外だった。てっきり不機嫌になると思っていた。
服を着ていた彼の動きが止まり、私をベッドへ押し戻す。
「ねえ、もう一回しませんか。いっぱいした方が感度が高くなりますよ。ね、今度はいっぱいイかせてあげます」
「ちょっ、……んっ……んぅ」
口内に入ってくる熱く湿った舌に応えるように自分も絡めてまう。
彼とのキスの時はそうしてしまうようになってしまった。
乳首を掠められてつままれる。
密壺から出てくる愛液が腿を濡らしていた。
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「……ごめんね、凪。待った?」
「いえ! お仕事は無事に済みました?」
「うん、おかげさまで。行こっか」
飯塚さんは二、三か月に一度、仕事の都合でこっちに来る。
その時にはいつも連絡が来て、食事に誘ってくれる。
他の女性の影がないといえば嘘になる。
でも、もしかしたら今は誰とも一緒になる気がないだけかもしれない。
いつか、彼に特定の相手が欲しい時がきて……その時には私を選んでくれるかもしれない――。
かすかな期待が捨てられずにこの関係を続けてしまっている。
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