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「…吉村さん?」
変な間ができてしまったことを心配する声が向こうから聞こえて
時間がまた動き出す
「あっ、ごめんなさい」
どうならあたしはフリーズしちゃったみたいだ
「聞こえてなかったのかと思ったよー」
向こうはいつもの調子
なんか笑けてきた
「あははは…」
「とりあえずよかったねー。今度、飲みにでも行く?」
「いいですねー」
「ご褒美で俺奢っちゃうよー」
「ほんとですかー?」
「マジマジ。また連絡する」
え、この感じだと話が終わりそう
終わってほしくない
「あ、」
何か言わなきゃ
何が言いたい?
「何だった?」
何をこの人に
伝えたい?
「い、1個だけ、お願いがあって」
見えてないのに、物陰に向かって指で1を作る
「なになにー?」
空を見上げる
心臓は激しく動いたまま
息を吸って
口に出す
「あたしのこと
“吉村さん”じゃなくて
“美羽”って呼んでください」
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