上り勾配

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「おつかれー」 ドリンクを持った武田さんの前に辿り着く 本当に疲れましたよ と言いそうになったけどやめた 「なんかすごかったね、前にいたジジイ」 呑気にドリンクを吸う武田さん 「…ほんとですよ…」 あの人がいなかったら、2分で買えたのに 「絶対周りに色々言われてるよああ言う人」 「ですね」 「ハイ、これ飲み物」 武田さんが飲み物をくれた 「これ…」 100%オレンジジュースだった 「柑橘系を前に飲んでいたから、好きなのかなーと思って。」 一瞬、時間が止まったような気がした 少し前に会った時のこと、覚えていてくれてたんだ… 「てかそろそろ時間やばくない?」 武田さんの素っ頓狂な声により 止まった時間が再始動 小走りで中に入ると予告編が始まっていた 「なんだまだ予告編か」 武田さんが言った 「…とっ、とりあえず座りましょう」 遅れるのは並んでいる時点でわかっていたので、比較的通路側の席を取った 席の番号を確認し、武田さん、あたしの順で座る やっと座れた 武田さんがあたしの右側にドリンクを置いて座る あと上映して座ってもずっと帽子をかぶっていた スマホも本編が始まるまで触っていた でもあたしはそんなことはどうでも良くて 時が動いてからずっと 手に持つジュースの氷が溶けるくらいに手が熱くなって 心臓の乱れも全然止まらなかった
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