上り勾配

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ひとしきり話を終えると 「ええー、そりゃ大変だったね」 と、バーガーのソースを顔についたままの大ちゃんが言う 「そりゃ確かにあたしは全然まだまだですけどね…」 「…いやいや、週1の早帰りなんてみんな楽しみにしてることだし! しかも金曜日の早帰りなんてさ、絶対楽しいじゃん! 若いから知らないかもだけど華金って言葉があるくらいだよ? それのために仕事してるレベルだよ」 「…やっぱそうですよね」 「つーか、リーダーって佐竹サンだっけ。あの人、結構問題のある人でさー」 「え、そうなんですか?」 「そうそう。ここだけの話なんだけど、佐竹サンは営業としてはそこそこ優秀だったっぽい雰囲気出しててるじゃん? でも実際のところ、案外そーでもなくてさ、陰でなんて呼ばれてたか知ってる?」 「なんですか?」 「『2クールの佐竹』」 「にくーる…?」 Nクール的な? 「2クールってのは約半年のこと。佐竹サンのとってきた契約、基本半年以内にほぼほぼ解約されてんの」 「え、それっていいんですか」 「良くはないよね。早期解約は獲得したポイントが何割かマイナスになる。」 「ですよね」 「まあ、あの人の場合、マイナスになっても他で稼げばOKでしょ!って考えだったみたいから、あんまり気にしてなかったみたいだけどね」 「ほえー…」 『アタシそういうの全然気にしないから!ガンガンいくよ!』 佐竹リーダーがドヤ顔でそう言っている様を想像してしまった せっかくの休みなのに 「だから獲得した契約数のわりにポイントが少ないから、いつも佐竹サンって成績上位の表彰にギリギリ届かなかったんだよね。 彼女より獲得数こそ少ないけどちゃーんとやってる同期や後輩にトントンっと抜かされてやんの」 「へ、え…」 「しかもさー、佐竹サン、本当は営業エキスパート職になりたかったみたいなんだけど、そういう営業スタイルだから当然希望しても通らなくて、仕方なくリーダー職になったんだって。 単独で営業活動をすることがなくなったから、そういう嫌な仕事減るなーと思って、事務の人もコルセンの人も内心喜んでた。 でも蓋を開けたらびっくり。あの人についていけなくて、どんどん新人が辞めていく。 俺が知ってるだけでも去年は4人、今年は2人。」 「えっ」 そんな人の部下だったのかあたし
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