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第11話 試される家族愛?(後編)
サリー「ワン♪ワン♪」
サリーが心なしか楽しそうにオレとレオを追っかけてくる。それをオレたちは家の外周に沿って必死で逃げていく。
いや、悪かったよ。オレ達はあの程度のクオリティのぬいぐるみでお前をだませるって本気で思ってたんだよ…
逃げているときあることに気付いた。1匹足りない。
ドラ「ハァ…ハァ…ハルはどうした?」
横で走っているレオに聞いてみた。
レオ「ハァ…ハァ…わからない…」
この疑問は、走り続けて正面入り口まで戻ってきたときに解決した。サリーが吹き飛ばしたぬいぐるみが小さくモゾモゾ動いている。どうやらぬいぐるみと一緒に飛ばされたようだ。おそらくサリーに気付かれてさえいないだろう…運がいいのか悪いのかよく分からないやつだ。ただ、無事でよかった。
さぁ、これからどうしようか…
というか、これしか方法がない…
ドラ「ハァ…ハァ…おいレオ、オレが囮になるからお前は家の軒下に行ってくれ!」
レオ「ゼ―…ゼ―…軒下?なんでだ?」
ドラ「ハァ…ハァ…そこから家の中に侵入できる経路があるんだろ?ハア…ハァ…家の中に行って、ハツばぁさんを人質にして連れてきてくれ」
レオ「ヒュー…ヒュー…なるほどな…お前は大…丈夫か?」
ドラ「ハァ…ハァ…前回分かったんだが、何でかサリーは…オレしか追いかけて…こないんだ…囮はオレのほうがいい。でも長くはもたないからなる早で頼む!」
レオ「…わかった、任せろ!」
そういうとレオは近くの軒下に滑り込んだ。サリーは予想通りレオには見向きもせずにオレを追いかけ続けている。頼むぞ…相棒…
ドラ「ゼ―…ゼ―…」
レオが軒下に入ってからもう家の周りを2周している。さすがに疲労がたまってきており、長くは持ちそうにない…
ちなみにやることのなくなったハル君ですが、ぬいぐるみを持ってきたボストンバックにきれいに戻し邪魔にならないように敷地外に置いてきた後、安全なコンクリート塀に上り暇そうにオレのことを眺めている。
いろいろ突っ込みたいところはあるが、今ハルに動かれて事態がよくなるイメージが1ミリもないので取り敢えず放置することにしよう。
レオ~、どうなった?レオ~レオ~レオ~…
そんなことを思っていると軒下からレオがピョコっと顔を出した。
やったレオだ!…でもなんで軒下から??
本来であればハツを連れて、家の玄関から出てくるもんだと思ってたんだが…いやな予感がする…
レオは走っているオレを見つけると顔を背けて手(前足?)で大きく×マークを作りオレに合図を送っている…は??アレはなんの合図だ??事前に打ち合わせにもなかったよな…
色々ポジティブな方向に考えを持っていこうと思ったが無理だった。もう聞かなくても分かるが次にレオの近くを通るときに一応確認を取ってみよう…ちなみにこの時点でもう家の周りを5周は走っており、いよいよもって体力の限界が近づいている。
レオがいる軒下近くまで走ってきた。
ドラ「ヒュー…ヒュー…侵入できたのか!?」
レオ「ごめん!無理だった!!軒下から部屋に入れない!」
ドラ「○×?♡♪☀☾!!」
レオを通り過ぎていく…あまりのことに訳の分からないことをいってしまった…え?誰かあの家は軒下から部屋に侵入できるって言ってなかったか??
いやいや、今はそんなことを考えている場合ではない。レオは軒下から部屋に侵入できなかったのだ!これが事実だ。
ではそうと決まれば一目散にこの家から逃げましょう。でもどうやって??
目の前に前回の作戦の時にオレとレオが使った木が見えてきた。
よし、このスピードのまま上るぞ!後ろを振り向くと、まだサリーが嬉しそうに後ろを追いかけている。ラストスパート、オレは最後の力を振り絞って走るスピードを速め、木に向かって走っていく。スピードを殺さずそのまま気に向かってジャンプした。…成功だ!木の半分くらいのところに着地し、そのまま登っていく。
よし、取り敢えずここまで登れば追って来れないだろう…と思った瞬間
ズルッ…ドスン!
なんとオレは右前足を踏み外し、バランスを崩して地面に落ちてしまった。あまりの疲労に前足に力が入らなかった…
ドラ「…イテテテテ」
着地の時に全身打ってしまい、痛がるオレ…
その時、背中に殺気を感じた!
サリー「ハッ…ハッ…ハッ…ハッ…」
振り返るとそこには、息を整えながら臨戦態勢に入っているサリーがいた。
ドラ「はははは…」
もう笑うしかなかった…長時間の鬼ごっこで足は棒のようになっており動かない。おまけにさっきの着地のせいで全身痛く、とてもじゃないがもう逃げる気力がオレには残っていなかった…
オレはどうなる?目の前の悪魔の牙で一気にやられるか…もしくはあの鋭い前足の爪でゆっくりなぶり殺されるのか…サリーにとっては何回も縄張りに侵入し、ふざけたことを仕掛けてくる一団のリーダー(自称)が目の前に追い詰めたんだ…こんな楽しいことはないだろうな…
でもオレもハードボイルドな誇り高き野良猫だ。背中を見せて、最後まで逃げようとすることはしねぇ。最後は体が動かなくてもしっかり正面を向いて応戦してやるぜ。
ドラ「かかってこい!あほ犬!!」
サリー「ワォーンッ!」
サリーは、天に向かって遠吠えをするとこちらに突っ込んできた。
その瞬間、
レオ「やめろーーーーーーーーーーーー!!!」
ハル「ドラ、逃げてーーーーーーーー!!!」
2匹がこちらに向かって走り出したが、どう考えても間に合わない。
ドラ「ここまでか…みんな、ありがとう…ムギ…」
サリーに噛みつかれるその瞬間、オレは目をつむりつぶやいた。
そして…
ペロっ…
???
ん?なにかに右ほほを舐められたぞ??
恐る恐る目を開けるオレ。そこには、今までに見たことないような穏やかで優しそうなサリーの顔があった。
オレには何が起きているのかさっぱり分からなかった…
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