第1話 オレの一日

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第1話 オレの一日

オレの名前は【ドラ】 茶トラのクールな野良猫だ。性格はそうだな・・・人間の世界の言葉でいうと「ハードボイルド」。こいつのイメージが一番近いかもしれない。 オレは野良であることに誇りを持っている。 1人で生き、その行動に責任を持ち、だれの目も気にせずに気の向くままに行動する。そんな一匹狼(猫だけど)の生活がオレには合っている。 家族はいないのかって?おいおい、勘弁してくれ。ハードボイルドな野良猫にあまり多くを語らせるなよ。 さあ、今日も1日が始まる。しっかりついて来てくれ。 朝が来た。 オレの家は何年も手入れのされていない神社の裏にある森の中。そこに自慢の前足を使って掘った洞穴がオレの寝床だ。 オレは朝日とともに目覚める。 「猫は夜行性じゃないの?」という奴がいるがそれは個人差がある。 オレは太陽が大好きだし、夜になると眠くなる。確かに夜になると動き出す猫もいるようだが、そんな奴は大抵不良に憧れて親に反抗したい年頃の発情期(思春期?)の猫たちに決まっている。 オレはそんなガキではない。…ん?何の話だ? 目覚めたらまず、近くの池で顔を洗う。 「身だしなみの整っている野良猫」オレのポリシーの一つだ。 巣穴に戻り、軽く木の実を口に含んだらいよいよ町に出発だ。 一昔前の大人なら町に行ったら自分の縄張りのパトロールをしてライバルたちににらみを利かせることが一般的だったらしい。 オレも昔はそんな自分に憧れていたがもうそんな時代ではない。 「オレの縄張りで何勝手なことをしてるんだコラ!」 な~んて言おうもんなら周りの猫から白い目で見られ、笑われるのがオチだ。今は猫同士も助け合いの時代なのだ。時々、おやじ猫達がマタダビを加えながら「昔のほうがみんな活気があってよかった」と愚痴をこぼしているけど案外今だって悪くない。 しばらく歩いていると1匹の猫が声をかけてきた。 シゲル「お~い、ドラ。調子はどうだ?」 こいつの名前はシゲル。金持ちの家の飼い猫で頼めば大抵のものは調達してくれる頼れる道具屋だ。オレより一回り程年上だが気さくで話しやすい。ただ、部屋が異常に汚い。 ドラ「まーまーだな。また何かあったら頼むな」 シゲル「任せろ」 軽く言葉を交わして先に進む。 タマ「ドラ、おはよう。なんか面白い話ない?暇なんだよ~」 こいつはタマ。この辺に住んでいるメスの野良猫で噂好き。いろんな奴から話を聞いているからいろんな情報を持っている。 ドラ「んなもんねーよ。何かあったら教えるわ」 タマ「頼むねー。あ!お豆3兄弟が探してたわよ?」 ドラ「あ~…今度遊んでやるって伝えてたからな…今日はこの後用事あるからうまく逃げるわ」 タマ「あはは。かわいそうー。」 豆太「ドラみーつけた」 豆助「何して遊ぶ?」 ずんだ「でもさっき逃げるって言ってたぞ?」 げ!見つかっちまった… こいつらは、子猫の豆太(長男)、豆助(次男)、枝豆(三男)の三つ子だ。この辺じゃ「お豆3兄弟」と言われている。1回暇つぶしに遊んでやったら妙に懐かれてしまっていつも付いてきやがる。 ドラ「今日はこれから用事があるんだ。すまないけど遊ぶのはまた今度な」 豆太「え~」 豆助「用事って何?」 ずんだ「そんなのデートに決まってる」 豆太「デートか!すげーな」 豆助「でもドラはこの前サマンサに振られたばっかりだぞ?」 ずんだ「そういうのおれ知ってる~。‘’プレイ・ボーイ’っていうらしいぞ。父ちゃんも昔そうだったって母ちゃんが言ってた」 ……… ドラ「うるせー!!!」 お豆3兄弟「「「きゃー(笑)ドラが怒ったぞー!逃げろー」」」 ドラ「気を付けて帰れよー」 全く。勝手なことばっかり言いやがって。大体サマンサって誰だよ。会ったことねーわ!! さわやかな風が流れる。 さあ、そろそろ帰ろう。今日は巣穴の近くの神社で会議がある。 帰り道一匹の猫に会った。 純白のきれいな毛並み。首にはよく映える赤色の首輪。凛とした顔立ち。 ムギ「おはようドラ。」 この子はムギ。オレと同じ年に生まれた飼い猫だ。この辺一帯のオス共はみんな彼女のファンだ。 ドラ「おう…」 オレは硬派な野良猫だ。周りのオス猫達とは違う。しかし、なんでか分からないがこいつとはうまくしゃべれない。それどころか心臓がバクバクして疲れちまう。一体何なんだよ… ムギ「さっきね、お豆3兄弟に教えてもらったんだけど今日はデートなんでしょ?」 あのバカ豆兄弟…今度会ったら一発ずつ猫パンチをお見舞いしてやる… ドラ「ち…違―よ。あいつら適当なこと言ってオレの気を引こうとしてるんだよ」 むぎ「やっぱりね。ドラは優しいから。あの子たちはあなたが大好きなのね」 そんな満面な笑みでこっちを見るんじゃねーよ。なんか顔が見れないな… ムギ「そういえばあなたのことプレイ何とかって言ってたわよ?…なんだったかしら…プレイ…プレイ……」 ドラ「あー!!!!!そんなことよりお母さん元気か?」 ムギの母さんは体が弱く、いつもムギが世話をしている。 ムギ「うん!今日は調子がいいみたい。きれいな花を渡してあげたくて外に出たのよ」 ドラ「それならタマの家の近くにたくさん咲いてるぞ?」 ムギ「ほんと?ありがとう」 そう言ってムギは歩いて行った。…なんで俺はこんなに汗をかいているんだ? とりあえず今度あのバカ3兄弟に会ったら、一匹ずつ丁寧に頭突きをすることに決めた。 そんなこんなで朝の散歩が終わり、神社まで戻ってきた。 あいつらはもう着いているいるかな?
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