第4話 ドキドキ♡真夏のドロップキック

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第4話 ドキドキ♡真夏のドロップキック

猫会議の次の日。オレ達はハツの家の前に集合していた。生暖かい風がオレ達を吹き抜ける。いい緊張感が漂っている。 オレ達は今日、作戦を決行しハツの家を占領する。その為にオレ達は幾度となくオレ達の前に立ち塞がってきた悪魔の化身【サリー】を乗り越えないといけない。レオとハルとの打ち合わせは完璧だ。シュミレーションも完璧だ。なのになぜこんなに震えが止まらない?そうか…これが武者震いというやつか… 明日の朝にはハツの家の中で朝を迎えているはずだ。オレの仲間たちの自信にあふれた顔を見てみろ。オレ達は成功しか見えていない。ふと顔を見上げるときれいな月明かりがオレ達を不気味に照らしている。今夜は満月だったか。 ……そろそろ決行の時間だ。 ドラ「さあ、行こうか」 レオ&ハル「おう…」 まず動いたのは囮部隊のハルだ。所定のブロック塀の下をのぞき込むと、なるほど、確かに会議でレオが言った通りハル一匹がギリギリ入れる穴がある。その前でいったん止まるとハルはこちらに顔を向けると小さくうなずいた。「こっちは所定の場所についた。移動を開始してくれ。」言葉を発しなくても今のオレたちにはハルの言っていることが十分わかった。 ドラ「いい顔しやがって…」 レオ「全くだ。オレ達も行こう」 軽くレオと言葉を交わすと、オレも動き出した。まずはブロック塀に上りサリーの居場所を確認する。もともと猫は気配を消すことには定評がある。難なくブロック塀に上りサリーを確認。あいつはオレ達の反対端で丸くなっていて眠っているようだ。こちらには全く気付いていない。 オレの合図でレオも持ち前の運動神経をいかんなく発揮し、すぐにオレの横まで登ってきた。音を立てずにブロック塀から飛び降り、敷地内に侵入するとすぐにオレ達は待機するべき木の裏側まで移動した。ちらりとサリーのほうへ目をやるとあいつはまだ丸まったままで完全にオレ達に気付いていない。 ここまででオレは心臓の音が聞こえるほど緊張していたが不思議と怖さはなかった。自分でも驚くほど冷静に周りが見えていた。これがゾーンといわれるものなのか。 体が自然と次の作戦へ動く。オレ達が待機するため、所定の木を登っていく。すぐ後にレオも続く。音を立てずに自慢の爪を使い上っていく。ある程度の高さまで行ったら、オレは左枝・レオは右枝に飛び移る。しかし、ここで問題が起きた。オレが左枝に飛び移るときに途中に小さい小枝を折ってしまったのだ… 「パキッ…」 深夜の閑静な住宅街に小枝の折れる音が響き渡る…例え小さな物音でも悪魔サリーを警戒させるには十分だった。物音が聞こえ、すぐにサリーは上半身だけ起き上がり周りを見渡し始めた。幸い、オレ達はギリギリで待機場所に到着していた。オレ達が乗り移った枝は葉っぱが生い茂り、完全に向こうからは見えていない(はず)。サリーはある程度周りを見渡すとまた体を丸くして動かなくなった。 ここからはレオの出番だ。事前に毛皮の中に仕込んでおいた肉球より少し小さめな小石を取り出す。それをハルが待機しているちょうど上程度のブロック塀にぶつける。 「コンッ」 よし!大体の狙いの場所に当てることができた。 するとサリーは2度目の不自然の音に起き上がり警戒心をむき出しにして周りを見渡し始めた。そして音の方向を注視している。すると…合図を受けたハルが体を目一杯丸め足が見えないように敷地内を転がってきた。本人曰く、「進むときはダンゴムシを参考にするよ」と言っていたが、前転を繰り返しながら進むダンゴムシをオレは見たことがない…そんな毛むくじゃらの謎の物体は敷地内を転がっていく。そして打ち合わせ通りの場所に到着すると…「ピタッ!」その場で止まった。 いや、ハルって結構度胸あるよな…こんな敵のど真ん中に前転で転がり続けるって…謎すぎてサリーはハルが進んでいる間、一歩も動くことができていなかった。無理もないか…オレがサリーでもここまで謎物体だと取り敢えず様子を見るもんな… よし!全員が所定の位置についた。作戦(ミッション)開始だ! サリーが警戒心バリバリで一歩ハルに向かい進んだ。しきりに鼻を鳴らし、少しでもこの得体のしれない物体の情報を探ろうとしていた。今までと緊張感の「質」が違っている。 もしもサリーが謎の物体を自分達「犬」より体も小さく力も弱い「猫」だと気づいた場合、奴は次にどう動く? 笑い飛ばして離れてくれるのか? それとも追い掛け回しておもちゃにするのか? オレ達「猫」の体の半分の長さもあるあの口であの牙で奴が本気で噛みついてきたらハルはどうなる? 一瞬で色々なイメージが頭の中を通り抜けていく… ただ、今俺たちが飛び出してハルの前に現れてもリスク的にはバレた時とさほど変わらない…だったら今の俺にできることは、動かず奴が所定の位置まで警戒心を解かずにゆっくり進むことを祈ることだ。 ただ、もしサリーにバレた場合、オレはすぐに飛び出し、命に代えても必ずハルを守り抜く。 サリーはまた一歩ハルに近づいた。大丈夫…まだ気付いていない… また一歩近づく…自分に大丈夫と言い聞かせながらオレはサリーの動向に全神経を集中させる。 あと5歩でサリーは目標地点に到着する。そして、オレ達は飛び出す!そうすればハルの努力を結果に繋げることができる。 あと4歩…あと3歩…もう少しだ…来い来い来い来い来い来い来い来い… あと2歩… あと1歩… 「プ~…」 閑静な住宅街に響き渡った異質な音… 「ワン!ワン!ワン!」その瞬間【悪魔サリー】が大きな声を発しながら家の裏まで逃げていった… ………え? 一瞬何が起きたのか全く分からなかった。 サリーが逃げていく背中を目で追いながらオレは頭の中を一回整理することにした… あのアホ猫(ハル)は、寸前のところで嗅覚が発達しているサリー様に至近距離で「屁」をぶちかましたのだ…そのあまりの臭いに悪魔の化身サリーは逃げ出した…オレのこの緊張感を返してくれ… え?これからどうすればいいの???? しかし、オレ達はこの後地獄を見ることになるのだがこの時はまだ誰も知る由もなかった。
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