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 トイレあそこ、と入り口の左端を指差す。奏斗はちょっと恨めしい気分でトイレへ走った。かわいいと言われるのを嫌がると知っていて、航はからかう。  決して航が奏斗を馬鹿にしているわけではないことはわかっている。航は常に奏斗を対等に見ていた。ただ奏斗は自分が頼りないと言われているような気分になるのだ。航にだけ、そう思ってしまう。  下げていたボディバッグからタオルを取り出し、鏡を見た。顔はむくんでいない。 「なんだよ、あいつ」  もしかして、下を向きそうになったのに気づいたからか。  顔を洗ってさっぱりし、トイレを出ると、航はゲート脇の壁に寄りかかり、駐車場の車の出入りを眺めていた。近くを通る女の子の三人組がじろじろ見ているのに、本人は一向に気づいていない。  やっぱりあいつ、かっこいいな。  奏斗は改めて思う。  好きになったのが航だったら。  奏斗は浮かんだ考えを即座に却下した。もう昔の話だ。それはあり得ない。  航の元へ走る。気がついた航がこちらを向いた。  航の隣はしっくりくる。誰よりも居心地がいい。本当はそうだけれど。  ゲートを入ると青空に映える大きな観覧車とジェットコースターが目を引いた。案内板を確認し、二人はレストランへ向かう。  こぢんまりとしていて、思ったより空いていた。昼のピークを過ぎていたからかもしれない。見回すと、周りは家族連れやカップルばかりだった。  店員に案内されたテーブルは、柱のない大きな窓から海が一望できた。景色を見ているとさっきまでいた海の町を思い出してしまう。頬杖をついて遠くまで広がる深い青に見入っていると、航がメニューを開いた。当然のごとく肉のページに直行する。 「なんにする?」 「ジャンボハンバーグかなあ」 「俺はステーキにする」 「いつもと一緒じゃん」 「お前だってそうだろ」 「たまには変えれば」 「お前が変えろよ」
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