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 目が覚めるとどこかの駐車場にいた。  沿道に立つ大きなケヤキが濃い影を作り、強い日差しは届かない。隣でオレンジジュースを飲んでいた航がこちらを見た。 「起きた?」 「……ここどこ?」  奏斗は伸びをしながら辺りを見回す。 「遊園地」 「こんなとこあったっけ」 「結構有名らしいよ。海の見える絶叫マシーンとか」  ジュースを飲み干すとペットボトルのキャップを閉めた。  奏斗は窓の中から入り口のゲートの向こうを見上げた。だがこの場所からはまだ何も見えない。ゲートの上に遊園地の名前が、踊り出しそうなかわいらしいフォントで掲げられている。 「とりあえず中で飯でも食うか。昼飯まだだろ」 「うん」  飲んどけ、と言って助手席のボトルホルダーにあったスポーツドリンクを取り、奏斗の膝に落とした。ボトルの周りについた水滴がジーンズに染みて、ひやりとする。キャップをひねり、半分ほど一気に飲んだ。冷たさが胃を通って身体を巡っていく。 「俺どのくらい寝てた」 「二時間ぐらい」 「うそ」  地名から考えて、出発してからおそらく一時間はかからない場所だ。その間隣で待っていたのか。 「行くぞ」  ドアを開け、照りつける日差しの中へ出ていく。奏斗はその背中をなんとなく見送った。 「おい、奏斗」  航がドアに手をかけ、屈んでこちらに頭を突き出し言った。 「うん」  あわててシートベルトを外し、外へ出た。  普通、待ってるか?  自分を棚に上げ、疑問を浮かべた。しかも日の当たらない場所をわざわざ選んで駐車している。  着いたら起こせばいいのだ。航は奏斗のわがままに付き合っているだけだ。いつもの航ならば、叩き起こしているだろう。  さっさと先を行く背の高い航に追いつき、隣に並んだ。  昨日佐良の隣を歩いたことを思い出す。うつむきそうになった瞬間に、航に背中を叩かれた。 「顔洗ってこいよ。かわいい顔がむくんでるぞ」
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