69人が本棚に入れています
本棚に追加
4
目が覚めるとどこかの駐車場にいた。
沿道に立つ大きなケヤキが濃い影を作り、強い日差しは届かない。隣でオレンジジュースを飲んでいた航がこちらを見た。
「起きた?」
「……ここどこ?」
奏斗は伸びをしながら辺りを見回す。
「遊園地」
「こんなとこあったっけ」
「結構有名らしいよ。海の見える絶叫マシーンとか」
ジュースを飲み干すとペットボトルのキャップを閉めた。
奏斗は窓の中から入り口のゲートの向こうを見上げた。だがこの場所からはまだ何も見えない。ゲートの上に遊園地の名前が、踊り出しそうなかわいらしいフォントで掲げられている。
「とりあえず中で飯でも食うか。昼飯まだだろ」
「うん」
飲んどけ、と言って助手席のボトルホルダーにあったスポーツドリンクを取り、奏斗の膝に落とした。ボトルの周りについた水滴がジーンズに染みて、ひやりとする。キャップをひねり、半分ほど一気に飲んだ。冷たさが胃を通って身体を巡っていく。
「俺どのくらい寝てた」
「二時間ぐらい」
「うそ」
地名から考えて、出発してからおそらく一時間はかからない場所だ。その間隣で待っていたのか。
「行くぞ」
ドアを開け、照りつける日差しの中へ出ていく。奏斗はその背中をなんとなく見送った。
「おい、奏斗」
航がドアに手をかけ、屈んでこちらに頭を突き出し言った。
「うん」
あわててシートベルトを外し、外へ出た。
普通、待ってるか?
自分を棚に上げ、疑問を浮かべた。しかも日の当たらない場所をわざわざ選んで駐車している。
着いたら起こせばいいのだ。航は奏斗のわがままに付き合っているだけだ。いつもの航ならば、叩き起こしているだろう。
さっさと先を行く背の高い航に追いつき、隣に並んだ。
昨日佐良の隣を歩いたことを思い出す。うつむきそうになった瞬間に、航に背中を叩かれた。
「顔洗ってこいよ。かわいい顔がむくんでるぞ」
最初のコメントを投稿しよう!