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「加藤さん、また来てくれるかな」
加藤さんの後ろ姿を見送った後、小さく呟いた。この店には家族でよく来ていて、マスターとも顔見知りだったため、土日や夏休み期間で、朝の忙しい時間帯だけバイトをしている私。加藤さんはモーニングを食べに来るから、私の勤務時間によく顔を合わせていたのだ。
「大丈夫、大丈夫。きっと来るから。それにしても桃ちゃん、罪な女だね」
「やめてくださいよ、マスター」
ハハハと顔では笑っていたけれど、心では泣きたい気分だった。加藤さんから見た私は、いったい何歳だったのか。加藤さんはもうすぐ三十路だなんて話していたから、二十代か三十代前半くらいに見られていたのかもしれない。
私に声をかけてくれる人は、いつも私より十歳くらい年上。本当は同級生、もしくは年齢の近い年上がいいのに。そんな贅沢ばかり言っているせいか、まだ恋も未経験だ。いっそのこと、年を偽って、うんと年上の人と大人の恋愛をしてみるのも良いのかもしれない。
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