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 皇歴1677年。  とある貿易大国。その宮殿の書庫で綺麗なドレスを身に纏った一人の女性が本を読んでいた。 「……この話は面白いわね」  多くの本の山に埋もれ、その綺麗なドレスを本の陰に埋もれている。  そして本の中で女性は立って読んだり、椅子の上で座って読んだり、特には行儀悪い地面に直接座り本を読んだり、積み重なった本の上に座り読んでいた。  そのせいか辺りは本が乱雑に積み重なっている本の山だったが、本人からしたらいたって整頓しているようなのだろう。  証拠に本に詳しい人たちや文官などは綺麗に扱っているように見ていた。 「この作品はつまらないですね」  何より、王宮の中で放り投げられた彼女にとって本と言うものは唯一の文化的な娯楽なのだろうと思う。  その証拠に、読み終えると持っていたノートにどこか面白いのかどこか面白くないのかと言う細かい感想も書かれている。 「む、これは新刊の本でしょうか?」  すると、彼女は一冊の本を手に取る。  その本は表紙はシンプルな物でありながらも、厚さは一般文学並みの厚さ。  背表紙や表神などはどこか高級感を覚える赤い色が目に入る。表紙に彫られている文字も金色が基調としているために、とてもじゃないが目に入る。 「ふぅん、内容は………貴族の秘密な恋話?」  女性は大体の本の内容を掴むために、パラパラと軽くページを捲る。  だが内容を見た女性は露骨に嫌そうな表情を向ける。 「貴族の恋愛もの、すか。あまり読みたくないですね」  素本を手に持ちながら、女性はそう言いながらも、本を読む事を趣味として持つ者として、読まなければいけないというプライドが邪魔をするのだろう。  いやいやの顔をしながらも、その瞳はその勝次男読むために本を開き、書かれている文字を読み始める。  綺麗に書かれた活字の列。そして所どころに挟められた挿絵が物語の中身を表現する。 「………」  それに似せる様に女性の本を読む静かな瞳が一つ一つ丁寧に汲み取られていく。  本位書かれていたのは、『昔々』から始まる昔ならではの、古き良きの言葉から始まる。その言葉に女性は少しだけ王道か、と内心喜ぶ。  だが、次に述べられた物語を見て、女性はその眉を歪める。 「なにこれ?」  そこに書かれていたのは、何とも綺麗な貴族の御話。  とある貴族のご令嬢が、夜会で一つの国の王子と恋をするという御話。  時には麗しい恋や綺麗な恋などが映されている一面、主人公たちに襲いかかる陰謀や謀略と言った数々に、同じ貴族のいじめ。だがそれを乗り越えて成就する二人の淡く儚くも熱い物語。  まさに、多くの女性が期待し憧れる夢物語であった。  だが女性はその物語に不満を募らせていた。  今までこのような本は何冊かあったのだろうが、女性の胸の内は今まで読んできた貴族の恋愛話の中でも群を抜くほどの夢だったのでしょう。手に持ったその本を強く握りしめ、目尻に涙を溜める。  そして、口にする。 「ふざけんな。もう少し解像度上げろ」  と。  まるでな何目上からのボディーブロー。  彼女の言葉には強い怒りと希望がああり、彼女が向けた言葉の中身には、又は手の無いほどの絶望感がある。  カツカツと足を鳴らしながらも、手に持った本のページを一枚、また一枚と捲っていく。  だが読み続ける度に、呆れ、絶望、怒りが包み込んでくる。  その感情を全て向ける様に、ノートに思ったことを全て書き記していく。  ここが駄目と、ここが違うと、解像度の薄いただの夢を打ち砕くように、書き記し述べていく。そうでもしなければ、女性の中にある静謐が崩れ去ってしまいそうだったから。  積み上げてきた物全てをそこに書き記す。  ページを捲り、ペンを走らせ、またページを捲る。  そのような行為をして、数時間。  女性は手に持った本を静かに閉じると、落ち着くために静かに深呼吸する。  感情的になったのだろうか。何度も何度も深呼吸をし、手に持った本の表紙を見る。 「こんな話、ありえない」  そう女性が言うと、手に持っていた本を静かに棚にへと戻し、この国の長の妻として、その場から去り、静かに鳴り響く鐘の音を背に皇后として執務に戻った。
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