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「俺はここの番人。死者を天界へ導く先導者だ」
「天界?天国ってこと?」
「現世ではそうだな。まぁ、天界へ逝けるかどうかはもっと上の奴が決めることだから、お前が無事に天界へ逝けるか俺には分からない」
「なら、何のためにあんたはいるの?」
「死者に死を受け入れさせ、天界に逝く準備が出来た奴を上に引き継ぐ役目がある」
「天界に逝く準備って?」
「思い残しを無くすことだ。現世に何か留まりたいと思う気持ちがあると、天界には逝けない」
「もし、思い残すようなことがあったら…?」
「番人が、望みを叶えて思い残しを無くすんだ」
「それって、私も望みを叶えてもらえるの?」
「お前は死者だからな。俺が担当する。何か叶えたいことがあるのか?」
「……何でもいいの?」
「もちろん禁止事項はある。命あるものすべてに害をなしてはならない。それが掟だ。さすがに番人でも、輪廻から外れた行動をすると消されるからな」
「そういうのじゃ、ないけど……」
「何だよ?言ってみろよ。とりあえず聞いてから要相談だ」
巻物をまき直しながら甚平男が言う。
「……う」
「う?」
「運命の人と……出会いたい……」
「……はあ?」
甚平男は拍子抜けしたのか声が裏返った。
「だから、運命の人と出会って、恋におちて、いつまでも幸せに暮らしたい!」
「そんなの、死んでるんだから無理に決まってんだろ?人の気持ちを変えることも、現世の人間と関わることも禁じられてる」
「禁止事項多すぎじゃない!?じゃあ一体何が出来るのよ!」
「俺に文句言うなよ!」
「あんたが望みを叶えてくれるって言うから言っただけだもん!」
「にしても、もっと他にあるだろ!?子どもかよ!」
「他はない!私、小さい頃からずっと夢みてた。運命の人が現れるのをずっと待ってた。そしたらいつの間にか歳だけ取って、気付いたら死んでたんだよ?その一番の夢が叶ってないのに死ねるわけないじゃん!」
「だから生きてる間、いろんな奴が言ってただろ!?死んだら何もできない、生きてるうちにやりたいことをやれって!生きてるうちが花なんだよ!なのに何もしてこなかったお前のせいだろ!」
「まだ生きてるもん!」
「お前ホント何も聞いてないな!お前はもう死んでるんだよ!」
「死んでる死んでるって言わないでよ!」
「事実だろ!?」
「死んでない!」
「死んでる!」
「心は、死んでない!」
私が力いっぱいにそう叫ぶと、甚平男は言葉に詰まった。
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