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 言葉が返ってこないことはもちろん分かっているけれど、それでも僕は、ノエルによく語りかけた。  今日は給食が美味しかっただとか、漢字の小テストで満点を取れただとか、その日起こった些細な出来事を話したり、逆に、人にはなかなか言いにくいことを弱音や愚痴のようにぽろっとこぼしたりもした。本当に、色々な話をした。  それに対してノエルは、僕の膝の上で丸まっていたり、前足を揃えて床の上に寝そべっていたり、その姿勢でしっぽをゆらゆらと上下に動かしたり、大きなあくびをしたり、急に部屋の中をぐるりと一周したり、話を聞くスタイルはその時々によってばらばらだった。  もしかしたら、僕の話なんてろくに聞いていなかったのかもしれない。でも、それでも良かった。  僕もノエルも、ありのままの状態で同じ空間にいた。  ノエルはリビングや両親の部屋にいることもあったけれど、基本的に僕の部屋で過ごすのを好んだ。  それがまた、たまらなく嬉しかった。
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