1人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
次から次へと蘇る、ノエルとの記憶。一度思い出し始めると、それらはどんどん鮮やかさを増していった。
一緒に過ごした時間、一緒に見た景色はどれも未だに鮮明で、色褪せてなんかいなかった。
なのに僕は、あの平べったい箱が出てくるまで、ノエルのことをすっかり忘れていた。
「…ごめん」
悲しさとやりきれなさのあまり、思わず声が出た。今はもうどこにもいないと分かっているけれど、ノエルに対して謝らずにはいられなかった。
そして僕は、小さな箱の蓋をそっと開けた。
そこにはやっぱり、ノエルの首輪が入っていた。僕が買ってプレゼントした、深い赤色の首輪。
僕のベッドの上の片隅で、眠ったままぴくりとも動かなくなったノエルの首から、震える手でその赤い首輪を外してあげたのを今でもはっきりと覚えている。手の震えは、その後もしばらく止んでくれなかった。
最初のコメントを投稿しよう!