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「…死にたいなんて、思っちゃ駄目だよね」
また、独り言が漏れる。程なくして誰もいなくなる部屋に、呟いたその言葉が浮遊する。
死ぬことは、何よりも重たく、悲しい。
ぽっかりとした大きな穴が、一つ空くのと同じだ。
それは僕が一番分かっているはずだった。なのに、それを自ら選び取ろうとする気持ちが、少しでも僕の中にはあった。
僕は、ノエルの首輪をポケットに入れた。
見えない所でずっと眠らせててごめん。またしばらく、僕と一緒にいてくれない?
「尚樹―、そろそろ行けるか?」
ドアを二度ノックする音と、父さんの声が聞こえた。
「うん、今行く」と僕は返事をし、段ボール箱を抱えて立ち上がった。
前を向いて歩いて行く気力を、完全に取り戻したわけじゃない。だからこそ、右ポケットのほのかな重みを、御守り代わりにしようと思った。
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