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「はーい、静かに。突然ですが、今日からこの一年四組のメンバーが一人増えます」  今日から僕の新しい担任となる先生が、ぱんぱんと二度手を叩く。  目の前に座っている四十人近い生徒が、揃いも揃って僕を見ていた。状況的に当たり前と言えば当たり前なのかもしれないけれど、僕はどうしようもなく居たたまれない気持ちになった。  やっぱり、教室という場所は苦手だ。 「じゃあ安藤くん、簡単に自己紹介して」  自己紹介、これも本当に苦手だ。僕は今にも口から吐き出してしまいそうな緊張感をぐっと飲み込んで、「安藤尚樹です。東京から来ました。よろしくお願いします」と何とか平静を装って言った。  言った後で、東京から来ましたは余計だっただろうかと急に不安になった。どこから来たのかと聞かれた段階で答えれば良かったんじゃないだろうか。わざわざ自分から言うなんて、厭味(いやみ)に聞こえてしまっただろうか。
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