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そんなことをうじうじと考えている間に、「はい、ありがとう。皆仲良くしてあげてね。そしたら、あそこの窓際の空いてる席に座ってくれる?それから先生、安藤くんに渡すはずだった教科書類、職員室に置いてきちゃった。すぐ戻ってくるから皆ちょっと待ってて」と担任は口早に言い、あっという間に教室から出て行ってしまった。
唐突な心細さに襲われた僕は、身を小さくするようにして机の間を縫い、指定された席についた。
大人の監視の目がない以上、すぐにあちこちから小さな話し声が生まれるのが教室だ。全く馴染みのない土地でも、そこは共通しているようだった。
そしてちらちらと、僕に視線が向けられているのが分かる。小さくした身体は小さいままで、なかなか力が抜けてくれない。
果たしてこの教室で、いつか僕は力を抜いて、楽に呼吸をすることができるようになるのだろうか。前の学校での記憶は、まだまだ色濃く残っている。
僕はほんの少し下唇を噛んで、右ポケットをそっと触った。布越しに伝わる、固い感触。
ノエルとは色々な場所に行ったけれど、学校に連れてきたのは初めてだな。そんなことをふと思った。
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