✳︎✳︎✳︎

2/8

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
 そんなことをうじうじと考えている間に、「はい、ありがとう。皆仲良くしてあげてね。そしたら、あそこの窓際の空いてる席に座ってくれる?それから先生、安藤くんに渡すはずだった教科書類、職員室に置いてきちゃった。すぐ戻ってくるから皆ちょっと待ってて」と担任は口早に言い、あっという間に教室から出て行ってしまった。  唐突な心細さに襲われた僕は、身を小さくするようにして机の間を縫い、指定された席についた。  大人の監視の目がない以上、すぐにあちこちから小さな話し声が生まれるのが教室だ。全く馴染みのない土地でも、そこは共通しているようだった。  そしてちらちらと、僕に視線が向けられているのが分かる。小さくした身体は小さいままで、なかなか力が抜けてくれない。  果たしてこの教室で、いつか僕は力を抜いて、楽に呼吸をすることができるようになるのだろうか。前の学校での記憶は、まだまだ色濃く残っている。  僕はほんの少し下唇を噛んで、右ポケットをそっと触った。布越しに伝わる、固い感触。  ノエルとは色々な場所に行ったけれど、学校に連れてきたのは初めてだな。そんなことをふと思った。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加