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「ねえ」
隣の席に座る女子が、ふいに話しかけてきた。
長い髪を頭の後ろで一つに結わえていて、それは背中の真ん中あたりまで届きそうだった。
ぱっちりとした二重の目はとても大きく、ただ見られているだけでも思わず怯みたくなる。一重でのっぺりした僕の顔を一蹴してしまいそうな目力の強さだった。
一目見ただけで、きっと気が強いタイプに違いないと思った。
「やっぱり、クソ田舎だと思ってる?」
「…え」
「東京から来ました、は確実にマウント取ってるでしょ」
僕の危惧が的中してしまった。やっぱり、言うんじゃなかった。転校早々、激しい後悔が全身を駆け巡る。
挑発的な目を僕に向けているその女子を、「セイ、しょっぱなから喧嘩吹っ掛けるのやめろって」と、僕の一つ前の席に座っている男子が後ろを振り返りながらたしなめた。
そして僕をちらりと見て「わりぃな」と一言呟きながら、片手を顔の前に立てて謝るような仕草を見せた。
「ああ、いや」と相変わらず曖昧な返事しか出来ない自分が、つくづく情けない。
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