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 何がきっかけだったのかは、今となってはもうよく分からない。  クラスの中で目立っている男子数人、僕が一番苦手なタイプの人達の、標的にされた。  (はた)から見たら、いわゆるいじめや嫌がらせに当たるんだろう。でも、僕はその言葉を使うことにどうしても抵抗があった。僕は弱い人間です、と、惨めに、そして無様に、主張しているのと同じことだと思ったからだ。  だから僕は「尚樹、もしかしてクラスでいじめられてるんじゃない?」と母さんから聞かれた時も、「安藤くんが嫌がらせを受けてるって、クラスの他の子から相談があったわ。先生、話ならいくらでも聞くから。我慢しないで」と担任から言われた時も、最初は首を横に振った。  大丈夫、別に平気、大したことないです、そう答えた。  僕なんかに構わないでほしいと思った。完全に救い出せる方法なんかきっと無いんだから、中途半端に優しくされたくなかった。だったら放っといてほしいと思った。
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